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オリジナル小説サイト『空中都市』の管理人ブログ。 近況やらたまの創作やら日々やらを綴ります。
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にお答えして、ちょっとがんばってみました即席な旅人話。ものすごくカオスに楽しくするはずが、カオス散会意味わからない話になました。よければどぞ。

・・・・


 何かと俺は甘いのだと、知っている。
 ──ビルは優し過ぎるのよ。
 何度云われたかわからない言葉を、ここでも云われると流石に俺の感覚もおかしくなって来る。だがここに来てようやくにして、わかったことがある。
 ──優し過ぎるなんてことは、決して褒め言葉ではない。

「ねぇねぇ、ビル! あれすごいね、なんだろう!」
「ねぇねぇ、ビル! これなぁに、おいしそう!」
 中途半端に口を出して放ることができるのならまだしも、俺は結局、完全に捨て去ることができずになんでも面倒を見てしまう。
 だから、面倒くさいんだって。
「リュース、眉間に皺が寄ってるけど」
「おまえも黙って食ってろ……」
 話すのも面倒くさくて、俺はベンチにぐったりと座り込む。身体が重たい。もともと体力ないくせに、なんで俺はこんなところに居るのかと疑問が湧く。
 そんな俺を仕方ないなぁとまるで身内を見るような目で、ティーガが立ったまま見て来る。
「なんだ、ビル兄だらしないなぁ、しっかりしてくれよ」
 しっかりしたいが残念ながら、10歳の年の差はでかいだろう。若さをくれと云いたい。18になっても子どもの居ない俺だが、既に一生分子どもを育てた気分になっている。
「ビルさん、大丈夫ですか。お水持ってきましたけど……」
 通りの向こうから走って来て水を差しだしてくれたルリエールが神に見えた。俺より体力なさそうなのに、ちっとも疲れた様子を見せないのは、普段から生活がしっかりしているからだろう。主に俺の生活はと云えば、寝て起きて、寝ることだけだ。
「ありがと……」
 すっかり俺の身体を知り尽くしたように、ルリエールはいろいろしてくれる。
 ベンチに倒れ込んだ俺の前では、ショーウィンドウに張り付いた自称海賊の船長と、自称看護師が並んでいる。
「おお、見ろよ、ルカ。あれぞジョー・クルーの遺物だぞ! なんでデヴィットの奴来なかったんだ!」
「たまには夫婦水入らずで過ごしたいんでしょ。本当に居るのね、ジョー・クルーって」
 カオスだ。

 戦争が終わったばかりの土地だと云うのに、少し西に行けばちょっとしたショッピングモールのような場所があるとルリエールに聞いたのは昨夜のことだった。ネイシャが珍しく行きたいと反応し、最初はルリーエルとネイシャの予定だったが、二人に連行された俺が加わり、ルカからミアロア、シーバルト、孤児院にまで届いてしまい、なぜかこんな大所帯になったのである。
「なぁ、ビル! ジョー・クルーの人形欲しくないか!?」
 ショーウィンドウから離れたかと思えば、ジョーは興奮冷めやらないと云うように聞いて来る。本当に実在したのかよ、ジョー・クルーとそっちに俺も驚いてしまう。
「えーっ、ジョー・クルーの人形があるの!?」
 思ったより反応を示したのは、俺の前に居たティーガだ。まさか西でそんなに有名だとは、俺もまったく知らなかった。
「え、ジョー・クルー!?」
「ジョー・クルーって、シーバルトのじゃなくて、ほんもののほう?!」
「だーっ、俺だってジョー・クルーだっての!」
 喚くジョーを無視して、俺の隣で菓子を食っていたミアーナとロアーナがティーガにくっ付いて行く。
「ジョーって有名人なの?」
 同じく疑問に思ったらしいネイシャに訊かれるが、俺はさぁと首を傾げる他ない。別に知りたいわけでもなかったが視線をルリエールに向ければ、彼女は苦笑して答える。
「子どもの童話とか、劇団員がやる演目によく入っているんですよ。その昔、この地方に実在したジョー・クルーとデヴィット・マケンストの話」
 本当にそのままの名前だったのかと、逆にそっちに驚かされる。
「ルリエール、ちょっと来てくれるかしら。欲しいものがあるのよ」
「あ、はい、お付き合いします」
 ちびっ子──30前の男も居るが──の下らないロマンに興味などないのか、ルカはずいぶんと冷静にルリエールを呼ぶ。気が付けば取り残されているのは、俺とネイシャだけだ。
 ってちょっと待てよ。
「……俺たちで、ここに居ろと?」
「だねぇ」
 よりにもよって西国に縁もゆかりもない俺と、西国に居たものの祠から10年ぐらい出なかったネイシャと、ここで留守番とは動くにも動けない。危険を察して居るのか、菓子を食べ終わったらしいネイシャは、きょろきょろと辺りを見回すもベンチから動こうとしない。
「何所か行きたいところでもあるのか?」
「ううん、そうじゃないんだけど……」
 既にあちこち歩いて、もう昼飯も済んでいる。後は帰るだけだと思ったのだが、大人と云える人が役3名しか居ないのだから、もう少し時間がかかることを計算に入れておけば良かった。
「……まぁたぶん、これぐらいなら迷うこともないから歩けるけど」
「駄目だよ、リュース、気がつくとすぐ倒れちゃうもん」
 いつから俺はネイシャに面倒見られる立場になったのやら。これではいったいどちらが保護したものなのかわからない。
「おまえでも、来たがった割には何も買ってないだろ」
 俺は大層満足なことに、万年筆も紙も買った。ネイシャに金を使ってやったのは、せいぜい昼飯と菓子ぐらいだ。女神様のお眼鏡に敵うものはないようだ。もちろん、こんなことを云ったらネイシャの顔を余計暗くさせるだけなので言葉にはしないが。
「今度は何辛気臭い顔してんだよ」
「え、そ、そんなことないよ?!」
 そう云って慌てる様は、むしろその通りですと肯定しているようにしか見えないのだが。面倒くさくてじっと見返せば、ネイシャは居心地悪そうに俺から視線を逸らす。
「その、……今まで何も持ってなかったから、みんながどういうものに感動するのか、よくわからなくて。みんなが行くところなら何かあるかと思ったんだけど」
 特に何も欲しいと思えなかった。
 綺麗だと思えるものはある。かわいいと思えるものもある。ただそれが、自分の持ち物になるという感覚が、よくわからないのだと。
 よくもまぁ、11歳(本当にそうかは不明だが)の女がそんなことを云えるものだ。俺の国許の女なら、その年齢で着飾ることに懸命な奴らの方が多いだろう。
 こいつは今まで、それだけの生活をして来た。与えられたのは女神と云う称号だけで、手の届かない世界を守ることを与えられて来た。世界とは切り離された存在だった。
 ショーウィンドウの前で伝説のジョー・クルーを見ていた奴らが、いつの間にか消えている。中にでも入ったかと思ったが、後を追う気にもなれない。
「行くぞ」
「え?」
「歩けばなんかしら、見つかるだろ。それ一つ買って行けば良い」
「でも……」
「物欲在り過ぎるのも問題だけど、なさ過ぎても問題だから。せめてなんか必要なもんぐらいそろえておけよ」
「必要な、もの……」
「服とか装飾品とか……その他だよ」
 俺も大して物欲のある人間ではないので、うまく説明できやしないが。
 ネイシャはすべて、与えられている。女神をやめた今でも神儀服のままだし、髪型も変えようと云う発想がない。別に変えろとか口煩いことを云うつもりはないが、それぐらい自分で決めても良いことなのだと、いい加減気付くべきだ。
「服?」
「いや別に、そのままでも良いけど……」
 堅苦しい服装が嫌いな俺にとっては、窮屈以外の何ものでもないと思う。
「ううん、リュースがそう云うのなら、見てみたい」
 結局はそこですか。って云うか、俺、よりにもよって服とか余計なことを云った気がする。妹ぐらいの奴が欲しがる服なんてわからねぇし。ルリエールが帰って来るまで待とうと云うのも莫迦らしい。仕方なしに俺は、やる気ないまま座っていたベンチから立つ。ルリエールのくれた水が利いたのか、少しは落ち着いた気がする。
「自分で決めろよ、俺わかんねぇから」
「うん、がんばってみる」
 服一つに何をと思いながらも、無邪気に笑うネイシャを見たら文句を云う気も失せてしまった。俺はどうしてこうも甘いのだろう。妹が居たらきっとぶん殴られているところではないかと想像できる。

 ──おまえは優し過ぎて、時に残酷だ。
 あの従兄は本当に、正しいことを云っていたと思う。俺がしていることが優しさに入るかどうかは別として、過度の優しさは残酷になる。それを知っていなければならないとは思うものの、俺は結局、面倒くせぇと思いながらも、手を差し伸べてしまう。
 たとえそれが、残酷だとしても。

・・・・

なんかまとまりのない話になってしまいました。ごめんなさい、部長(笑)
もうちょっと笑える話のつもりで書くつもりが、どうして暗くなるんだ、自分。
旅人も二部とか始まったらもう少しネイシャが成長して書き易くなり、遊べるはずなので!

こんなんで答えられているかどうかはわからないけれど、ひとまずあげておきます!

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